社会人になってすっかりヲタがぶり返した管理人が、日々の話題をヲタっぽく語るブログ
【本を見ないで書いたあらすじ】
1950年代のイギリス。由緒ある屋敷ダーリントン・ホールの老執事スティーブンスは、屋敷に対して召使の人手が少なすぎることに危惧していた。昔は数多くの召使がここで働いていたが、前の主人が亡くなり、屋敷が新しい主人のものになった時にほとんどの召使が辞めていったのである。 そんな折、新しい主人に休暇をもらったスティーブンスは、結婚して屋敷を去っていった元同僚のメイド、ミス・ケントンに復帰してくれるよう相談すべく、彼女の嫁ぎ先までドライブ旅行を兼ねて出発する。 イギリスの素晴らしい風景と、農村の人々に触れながら、スティーブンスは屋敷が前の主人のもとで輝いていた時代のことを思い出していく。 【ネタバレなし感想】 ※ネタバレあり感想は下の方で 通勤時Onlyで読み進めていた「日の名残り」ですが、ようやく読み終えました。 うう…なんかズキズキする読後感だなあ。ボロボロ泣ける感動ものとはちょっと違って、読んだ後もしばらく「あの時ああしていればこうはならなかったのでは…」とかフィクションの登場人物に対して考えてしまうような作品です。 同じ作者の「わたしを離さないで」の方が「あの時ああしていれば」感は大きいかな。それだけに「わたしを~」は読んだ後の気持ちのどんより具合も激しいのですが、今回の「日の名残り」は切ないながらも最終的には主人公のスティーブンスが前向きなので、ちょっと救われます。 いやしかしこんなに私にとって当たりが続くとは、カズオ・イシグロ凄いですね。 そりゃこの「日の名残り」もイギリスのブッカー賞を取ったくらいなんで、凄いとか私が言うのも失礼かもしれないんですが、なんだろ、この方の文章や描写はかなり淡々としているのにもかかわらずページをめくらせる力が半端ない。偶然「わたしを離さないで」を知って買ってみてよかったよー。今までの海外作家に抱いていた「読みにくそう」というのが払拭されました。翻訳者さん素晴らしいお仕事です。 【リンクをクリックでネタバレ感想展開】
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冒頭で、初めて垣間見るイギリスの執事世界(エマは未読なもので…)にひたすらカッコイイという感想を抱き、「キッチンで寝ている虎を発見した執事」エピソードでも、その後の「執事の品格」論でも、「いやぁ~スティーブンスって品格あるね!!」みたいに感心しながら読み進めるわけですよ。わたくし。 でもって途中でミス・ケントンが登場すると、スティーブンスとは正反対の感情の出しっぷりに「この若輩者めが!!スティーブンスのように沈着冷静になれ!!」と完全に心はスティーブンス派。むしろスティーブンスと同化してミス・ケントンにプンプンしたりしています。 しかし、初めての大舞台で父親の死に目に会えなかったシーンに至ると、執事はそこまで職務に忠実でないといけないのか?というかすかな疑問(と、圧倒的切なさ)が襲ってきます。スティーブンス自身は、冷静に仕事をやりきったことを品格を持ちえた第一歩の日として思い出しているので、そういうものなのかな、とこちらは思うしかないわけです。切ないけど。 で、ミス・ケントンとの仲が微妙に悪化すると、ミス・ケントンがスティーブンスのことを好きなのが読みながらだんだん分かってくるので、冒頭の感想とは変化してくるわけです。そこまで感情を隠さなくてもいいんじゃない?と。しかし、スティーブンスは、執事とはオン・オフで切り替えられるものではないと考えているため、プライベートな時には感情を出す、ということを決してしないのです。 ミス・ケントンが「私結婚します」って言った夜とか、にこやかにおめでとうとか言ってる場合ちゃうやろ!!どんだけ鈍いねんとか怒りさえ覚えてきます。 さらに最後の、ダーリントン卿が騙されようとしているのに、私は意見する立場にないとずーっと言い続けているスティーブンスに対して、「これが本当の品格なんですか?」と疑惑を抱き始める私。 もやもやしたまま(私の心が)、ミス・ケントンと再会し、衝撃の告白を受けてなおも「今の家族を大事にしなさい」笑顔で。 それだけに、最後橋の近くのベンチで見知らぬおじさんと喋りながら思わず泣くスティーブンス、さらにそのおじさんが言う「夕方が一番良い時間」(だったかな?)にちょっとうるうるきてしまいました。 それでも最後はファラディのためにジョークを覚えようと考えるスティーブンスは人生が執事なんだなあ。 しかしダーリントン卿はほんとに利用されただけのお人よしだったんかなあ。そしたらスティーブンスが哀れすぎてどうにもこうにも…。あとがきの丸谷才一はそんなこと書いてるけど。 PR 2007/06/30(Sat) 20:03:11
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